ピザじゃなくてpizzaです。
※題名はサンドウィッチマンさんのコント内の言葉です。
「こんにちは!ピザハットです!」
そんな声が聞こえてきた。
「取りに行ってくるよ」
そういいながら私は財布を持って玄関に向かった。
玄関を開けると冬の夜の冷たい空気が流れ込んできた。
ピザを受け取って戻ってきても彼女の表情は変わっていなかった。
せっかくのクリスマスだというのに明るいのは部屋にあるクリスマスツリーの装飾だけ。この部屋には人が二人いるとは思えないほどの静寂がはびこっていた。
「冷める前に食べようよ」
私はそう言って箱を開けた。
ピザから立ち上る蒸気によって目の前が曇り、鼻にはピザのにおいが充満した。
彼女は無言でピザを一切れつまんで食べようとした。
チーズが伸びて、上に載った具材が落ちた。
クリスマスだからとトッピングを乗せすぎたかもしれない。
私も一切れ取って食べた。
静寂に2人の咀嚼音が割り込んできた。
彼女は一切れ食べ終わると手をこたつの布団の下に入れてしまった。
「もういらないの?」
私がそう聞くと彼女はもう一切れを持ち上げ食べ始めた。
ここまで静かな彼女は久しぶりだった。
いつも明るいのに。
町のクリスマスの装飾が彼女の明るさを奪ってしまったのだろうか。
私は何とかしゃべろうとしたが言葉が出てこなかった。
ピザを食べることだけが今の僕にできることだ。
そう思うといつもよりもピザの味が複雑に感じた。トッピングのせいだろうか。
一切れだけピザが余った。
彼女はもう手を出そうとしない。
私は台所に行き余ったピザをお皿に乗せてラップをかけた。
帰りしなに言葉が出た。
「ピザおいしかったね」
「ピザじゃなくてピッツァだよ」
彼女はそう言って笑った。
僕も笑った。
普段彼女はそんなことは気にしない。私がピザと言おうがピッツァと言おうが気にしない。ピサと言おうがヒザと言おうが気にしない。
彼女なりに私と会話をしようとしてくれた。頑張ってくれていた。
私のことを思ってくれていた。
そう思うだけで私はうれしくなった。
明日の朝食べるピッツァは今日よりも味が単調に感じるかもしれない。冷めてチーズも固まっているだろう。
それでもきっと今日のピザよりもおいしい。
部屋の空気は町のクリスマスに取り込まれて明るくなった。
あとがき?
登場人物
男1人
女1人
ピザハットの配達員1人
彼女の機嫌が悪い理由は...特に考えてありません。ご自由に想像してください(^^♪
私だったら、クリスマスデートで見た映画の感想が合わなかったのかなーとか考えます。そんなことではこんなことにはなりませんかね?(-_-;)
それでは。